会報誌

今、話したい「食」と幼児教育 【対談】

山口 剛史さんプロフィール

「食育」という言葉が浸透しつつある昨今、お子さんの食にまつわる悩みを抱える保護者も少なくありません。「食」を通じて人々の健康増進を提案、健康課題を解決していく会社を立ち上げ、出産を機に栄養や安全にこだわった事業を行う、株式会社食のおくすり代表取締役、佐野 こころ氏に、幼児教育のエキスパート石井 大貴氏が、幼児期の食の大切さについて聞きました。

幼少期からの食習慣が人生を決める
食育は教育の基本の「き」

バランスのいい食事

石井氏
●佐野さんは大学時代の看護実習時に、過去の生活習慣を後悔する多くの方々と接することがきっかけとなり、予防医学の研究を始められています。一方で大手料理教室のヘルスケア部門の立ち上げに携わり、女性のライフスタイルから考える健康や健康のための食生活等について発信されています。さらに出産後、食育に関心を持たれたそうですが、そんな佐野さんが考える「食育」とはどのようなものなのでしょうか?

佐野氏
●食は人にとって生涯必要なもの。その意味では、お子さんだけでなくどの世代においても、食に関することは食育と捉えるなど、幅のある言葉です。私たちの活動では、その中でも「脳や体が急成長する幼少期から学童期」を対象に定義しています。人間としての基盤を作る時期に、どんなことをインプットするかがとても重要だと考えているからです。私が保健師として栄養指導していた頃、減塩指導をしても「昔から食卓には漬け物があった」など、習慣を簡単に変えられない人が多く、幼少期からの食習慣が、将来の健康作りに非常に重要だと考えるようになりました。また私自身子どもが生まれたことで、どういうものを食べさせたいか、どういう経験させたいかを考えるようになったのも、食育に関心を持つようになったきっかけです。

石井氏
●私も幼児教育と食の関連性は高いと感じています。具体的には、まず幼少期は多感な時期であり体を作る重要な時期なので、健全な心と体を育むのに重要だということ。2つめは、保護者と子どもの貴重なコミュニケーション機会であること。3つめは1日3回きちんととることで生活習慣の基板になること。きちんと時間を守ることやしつけの機会にもつながり、基本の「き」を担う意味で、食育は非常に大事だと思います。

「家族との充足感」「栄養補給」として
重要な役割を果たす幼児期の食の時間

家族で食卓を囲む

石井氏
●ご自身が子育てされている中で、食に関して特に気をつけていることはありますか?

佐野氏
●1つは「食に興味を持たせること」です。わが子はまだ2歳7カ月なので、シメジをさいたりミニトマトのへたをとったりと、できることは限られていますが、食材に触れるようにしたり、料理の過程を見せたりしています。外食時、スマホばかり見ている親御さんをよく見かけますが、親自身がもっと食に関心を持つといいと思います。もう1つは「家族で食を囲むこと」。その際、同じものを食べるようにして、食材について話題にしたりとコミュニケーションをとるようにしています。

石井氏
●なるほど、参考になります。ところで、好き嫌いのある子にはどう向き合えばいいでしょうか?

佐野氏
●好き嫌いは悪いイメージありますが、苦いものや酸っぱいものを避けるのは、生き物としての本能です。ゆで方が不十分で硬いなど、物理的に食べられないこともありますし、初めての食べ物は警戒したり、同じものでも気分によって残すこともあります。ですから、「この子はこれがきらいなんだ」とすぐに決めつけるのではなく、「なぜ食べないのか」を考えてみてはどうでしょう。やがて直ることも多いので、おおらかに捉えていいと思いますが、いろいろな食材をとることは大切なので、懲りずに食卓に出し続けるのは必要です。そうすることも食育の一環ですし、家族でご飯を食べることも、スーパーに一緒に行って食材を選ぶことも、お手伝いも食育です。生活の中で学べる要素があふれているので、たくさんの体験をさせてあげ、心身共に健康に育ててあげてほしいですね。

石井氏
●同感です。幼児期の食は、先にあげたように「充足を感じる時間」として、また「栄養をきちんと補給する重要な機会」としてとても重要です。福澤諭吉先生は「まず獣身を成して而して後に人心を養う」との言葉を残されました。幼少期にはまず獣のような強い体を身につけ、その後に心が宿るということで、「勉強はもの心ついてからでいい。幼少期は運動、食、睡眠をしっかりやりなさい」といわれています。この言葉の通り、日中はしっかり運動してお腹をすかせて栄養の高い食事を取って、健全な心身つくる。それを私自身も心がけたいですし、皆さんにもお勧めしたいと思います。

佐野さんに聞きました
最近の子どもに不足しがちな栄養素は?

鉄分とビタミンD

 

鉄分

「鉄分は大人でも不足しがちとされる栄養素。不足すると体内への酸素供給量が減り、疲れやすくなります。学童期に疲れやすいという子は、鉄不足かもしれません。幼少期に意識してとりたい栄養素の1つなので、豊富に含まれている赤身肉や小松菜を使ったメニューを食卓に出すといいでしょう」

ビタミンD

「陽を浴びることで生成されるビタミンですが、最近の子は外遊びが減っていたり、過度な日焼け止めをしたりするために不足しがちです。実際、ビタミンD不足が原因の病気(くる病)の子も増えています。ビタミンDは免疫力をつけるためにも大切なので、間違った情報に惑わされないようにしましょう」

pcfooter画像
pcfooter画像