会報誌

乳幼児期に不可欠!質を高める睡眠と生活習慣とは 【対談】

山口 剛史さんプロフィール
「寝かしつけがたいへん」「夜中に何度も起きてしまう」――多くの保護者が抱える子どもの睡眠問題ですが、そのお悩みを解決してくれるのが、アメリカ・ニューヨークを拠点に日本人初の子どもの睡眠コンサルタントとして活躍している愛波 あやさんです。幼児教育のスペシャリスト石井 大貴氏が、乳幼児期に確立しておくべき睡眠と生活習慣について聞きました。

「ねんねトレーニング」でわが子がぐっすり!

眠っているこども

石井氏
●「睡眠コンサルタント」とは日本ではあまり聞き慣れませんが、愛波さんがこのお仕事をはじめられたきっかけや内容を教えてください。

愛波氏
●私は現在、2人の男児を育てながら、子どもの睡眠に悩む保護者のコンサルテーションをしています。日本人向けに睡眠を専門とする「Sleeping Smart®子育てサロン」と睡眠・育児について配信を行う「ぐっすりLIVE」を運営するほか、オンラインで妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント資格取得講座の講師も務めています。この仕事のきっかけとなったのは、私自身の体験です。私は2012年に長男を出産したのですが、寝かしつけや夜泣きにすごく悩みました。夜泣きする長男をひたすらバランスボールの上で3時間あやしたり・・・。子どものために頑張らないと!と必死でした。そんなとき、アメリカ人ママがお子さんを「ねんねトレーニング」して、ママも子どももハッピーになっていることを目の当たりにしたんです。それで科学的証拠があるトレーニング法や睡眠のメカニズムなど3カ月くらいかけて勉強し、生後10カ月の時に長男に一人で寝られるねんねトレーニングをしたところ、4日で一人で夜通し寝るようになったのです。もう、びっくりしましたね。

石井氏
●一人でぐっすり、ですか。

愛波氏
●はい。一人で寝かせるのはかわいそうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私自身の体験を通して思うのは、もっとかわいそうなのは、夜中に子どもが起きてしまうことです。とくに1歳以降に夜中に何度も起きてしまうと、心身の成長に大きく影響してくるということがわかっています。

石井氏
●そもそも子どもはどのくらいの睡眠時間が必要なのでしょうか。ちなみに私はだいたい6時間睡眠なのですが。

愛波氏
●私の場合は、7,8時間寝ていれば子どもにイライラしません。足りないと感じるときは昼寝をすることもあります。子どもについては個人差もありますが、3歳から5,6歳の頃は10時間寝ていれば大丈夫です。

睡眠不足は学力や運動能力、「やり抜く力」にも影響

走る子ども

石井氏
●幼少期の睡眠の質が良くなかったり少なかったりすると、どんな影響があるのでしょうか。

愛波氏
●「睡眠負債」という言葉があります。少しの睡眠不足であっても、それが借金(負債)のように積み重なってしまうことで、それによりやがて様々な病気の発生リスクを高めたり、イライラしたりして心身に悪影響を及ぼします。こうした睡眠不足や睡眠の乱れが続くと、日中の注意力や集中力の低下、つまり学力に影響してきます。なので、子どもの頃から正しい睡眠習慣をつけることが大事なのです。寝る時間が遅いと、体内時計がどんどんずれてしまい、朝きちんと起きることができなくなってしまいます。また、翌朝の起床時刻にばらつきあるのもNGです。体内時計が狂ってしまうと、話を集中して聞くことができない、持続力がない、手足をふってきちんと行進できないなど、様々な悪影響を及ぼしてしまいます。

石井氏
●私が主宰するつくし会でも行進ができない子が結構多いんです。運動ができるようになるには、「体幹を鍛える」などいくつかのステップがありますが、そうしたこと以前にまずは言われたことを認識することが必要です。ですが、しっかり睡眠が取れていなければ、ぼーっとしてしまうわけですよね。運動能力と睡眠はすごくつながっていると思います。

愛波氏
●その通りです。運動することで疲れるのでよく眠れますし、きちんと眠れているから「運動しにいこう」「がんばろう」という意欲がわきます。上達のスピードが違ってきたりもします。でも睡眠不足だと「行きたくない」となったり、やったとしてもケガをしたりしてしまいます。「言われていることがわからない」ということは、学習能力にも影響してきます。良い睡眠をとること、年齢に応じた睡眠時間をしっかりととることで、知識だけでなく体の動かし方の記憶も定着しますし、最後までやり抜く力も睡眠と関係していると思います。睡眠をきちんと取っているからこそ「やり抜く力」は生まれます。

「睡眠の土台」をしっかり整えよう

寝かしつけるルーティン

石井氏
●では、そうなるよう、幼少期に良い睡眠習慣をつけるにはどうしたらいいのでしょうか。

愛波氏
●「睡眠の土台」をしっかり整えることです。それにはまず、朝日をしっかり浴びて、体内時計をリセットさせましょう。体内時計は24時間きっちりではなく、徐々に遅れるので毎日、朝日を浴びてリセットする必要があります。そうすることでセロトニンがしっかり放出され、その放出された分だけ睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されるので、睡眠の質がよくなるのです。そうして日中は外遊びをしましょう。直接日光を浴びることで、体内ではつくられにくいビタミンDが吸収される効果もあります。そして寝る時間になったら「睡眠環境」を整えて「寝かしつけルーティン」を確立するといいでしょう。

石井氏
●朝については、私も親子のコミュニケーションとして朝散歩をおすすめしています。また朝起きたとき、親子でちゃんと目を合わせて「おはようございます」と言うことも意識しています。そうすると、幸せな気持ちになるんですよね。ところで、「睡眠環境」とは具体的にどんなことでしょうか。

愛波氏
●子どもにとって快適な睡眠環境には4つの視点があります。まず「光」です。なかなか寝てくれないのは別の部屋からの光が入っていて脳が反応して寝られなくなってしまっているのかもしれません。2つめは「音」で、音に敏感な場合はリラックスする音をかけてあげましょう。3つめは「温度・湿度」です。子どもは熱がこもっているとなかなか寝付けないので肌寒いくらいがちょうどよく、20~22℃、湿度は40~60%が最適です。4つめは「安全」で、仰向けで寝かせること、横向きはNGです。「ここが自分の寝床」とはっきりわかるようにしてあげることも大事です。「この部屋に入ったら寝るんだよ」ということがわかるようにゲートをつけるといいでしょう。

石井氏
●「寝かしつけルーティン」についても具体的に教えてください。

愛波氏
●これは「ねんねルーティン」ともいっていますが、寝る前の儀式のようなもので、とても大事です。おふろ、保湿、水分補給、歯磨き、トイレ、絵本を読む、薄暗い寝室に行く、「大好きだよ」と伝える、などといったことを毎日同じ順番で繰り返します。表にして寝室に貼っておけば、子どもは自分でやるようになります。シールを用意して達成感を与えてあげるのもいいでしょう。毎日一貫性をもって続けることがポイントです。ルーティンができれば、子どもが就寝時間をわかるようになる、ねんねトラブルが少なくなる、子どもをリラックス&安心させる、といった効果が得られます。

石井氏
●ほかにポイントとなることはありますか。

愛波氏
●はい。「親子の幸福度」です。ご存じの方も多いと思いますが、「シャンパンタワーの法則」というのがあります。ママとパパが満たされていると子どもも幸せ、そして関係する友人や周囲の人も幸せになるというものです。ですから、ママとパパが十分睡眠を取ることが大切です。

「当たり前のこと」を地道にやって習慣化を

イライラして頭を抱える家族

石井氏
●愛波さんの息子さんは、ねんねトレーニングでぐっすり寝られるようになり、いい循環が生まれたとのことですが、具体的にどうよくなりましたか。

愛波氏
●まず朝起きたとき、子どもの機嫌がすごくよくなりました。離乳食も全然食べなかったのが食べるようになり、ケガも少なくなりました。十分寝ているからだと思います。私もよく眠れるようになりました。大人も睡眠不足だとイライラしがちですよね。私がイライラしていたら、夫も息子たちも「ママ、少し寝てきていいよ」と言うんです(笑)。トレーニングを受けてお子さんの睡眠が改善した友人たちも、「ママ、パパがどんどんハッピーになっていく」「夫婦の関係がよくなった」とよろこんでくれています。生活リズムを整えることは当たり前のことなのですが、毎日やることは私自身難しいと感じているので、無理のない範囲から始めるといいと思います。

石井氏
●私が主宰しているつくし会との共通点がすごく多いと感じています。「当たり前のことを当たり前にやる」。これは私がいつも保護者にもお子さんにもお伝えしていることです。教室に来たりコンサルティングとして話を聞いたりするのは一瞬ですが、実際やらねばならない実践の場は家庭です。それを愚直に、同じことを繰り返して習慣にする。これも大きな共通点です。我々でいえば、「大きな声であいさつをする」「靴を脱いだら揃える」「規則正しい生活をする」といったことで、子どもが変われば親も変わります。このルーティンが家族も周囲もハッピーにする。まさにシャンパンタワーの法則だと感じます。

愛波氏
●はい。睡眠がよくなると家族全員がハッピーになります。親の時間もできるので新しい資格を勉強するなど自分の人生が充実してきますよ。

昼寝やスマホはどうすればいい?

夜スマホを触る

石井氏
●昼寝について教えて下さい。保育園などで昼寝をするため夜に眠れないというお子さんもいます。その場合どうしたらいいのでしょうか。

愛波氏
●昼寝してかつ外で遊んでいなければ、夜に眠くならないのは当然ですよね。でも昼寝が必要なお子さんもいますから、自分の子がどうなのか特性を把握した上で、園に昼寝の時間を少なくするなどリクエストしてもいいと思います。5歳くらいで就寝が22時23時だったら、小学校に上がってもそうなってしまい、朝起きるのがつらくなって「行きたくない」となることもあります。登校したとしても時差ぼけ状態になるので、学習にも問題をきたしてしまいます。

石井氏
●保護者からは「スマホなどを見ていて寝るのが遅くなる」という悩みも多く聞きます。デジタル機器とはどう付き合えばいいでしょうか。

愛波氏
●スマホやタブレットが悪いわけではなく、時間を決めてやることが大事ではないでしょうか。私は「キリがいいところで自分でやめなさいね。ママを怒らせないでね」と伝え、自分なりに切り替えができるようサポートしています。また習い事をしていると、当然ですがその時間はスマホやタブレット、テレビなどを見ることはできません。その意味で、習い事はメリハリをつける手段の1つとして通わせています。

家族の幸せの原点は生活習慣!

幸せいっぱいの家族

石井氏
●最後に読者にメッセージをお願いします。

愛波氏
●お伝えしてきたように、当たり前のことを当たり前にやるのは難しいですが、リズムをつくってあげることは、生活をする上で自分もラクになるので、ぜひやってほしいと思います。まずは朝日を浴びることからなど、無理なく自分ができることから少しずつやっていくといいですね。

石井氏
●人間らしい生活を送っていくことが将来の幸せにつながっていると実感しました。私はかつて恩師から「朝は朝日とともに希望をもって目を覚まし、夜は日が沈むとともに感謝とともに眠る」という言葉を贈られました。昔は響かなかったのですが、今日の話でより響きました。「当たり前のことを当たり前にやる」と言うことだけではなく、「自分ができることをやる」ことが大事で、背伸びせずに家族と一体になって子育てしていく。その幸せ感が子どもに伝わり、子どもも幸せになる。その原点が睡眠であり生活習慣であると改めて感じました。ありがとうございました。

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