会報誌

お金の話をしなくても学べる、幼児期の経済学

親として、子どもに経済の仕組みを教えることはとても難しいと思います。しかし、幼児期の日常には、この経済学の基礎がたくさん隠れています。

たとえば、お菓子を2つ買いたくても今日は1つだけしか選べない状況だとします。これを経済学では、「トレードオフ」と言います。何かを選ぶと別の何かをあきらめる必要がある、という経験です。大人が決めてしまうのではなく、「どれにする?」「どうしてそれにしたの?」と問いかけることで、子どもが自分で考える力を育てることができます。

また、幼児期にぜひ育みたいのが「選ぶ力」。これは経済学の考え方でいうと「機会費用」につながります。機会費用とは、何かを選んだときに「選ばなかったほうでできたこと」を指します。たとえば、公園で長く遊べば、その分だけおうちで絵本を読む時間は減ります。お風呂で長く遊べば、寝る時間が遅くなります。こうした「どちらかを選ぶと、もう一方はできない」という経験が、先のことを考えて行動する力につながります。

さらに、子どもが自分で決めたことを大人がそっと認めてあげると、「自分で選べた」という肯定感を得ることができます。これは将来のお金の使い方、学習の選択、友人関係など、人生のあらゆる場面で意思決定をするための基礎になると考えられます。

このように、経済学は「お金の勉強」ではなく、「生きるための学び」だと言えるでしょう。日々の小さな選択の積み重ねが、子どもの未来をつくっていくことになるのです。