会報誌

チアダンスで「チア精神」や「表現力」が身に付く! Gravis 代表取締役社長 山田 康介氏インタビュー

近年、子どもの習い事として人気急上昇中の「チアダンス」。ポンポンを持って笑顔で踊る、華やかなダンスに憧れを抱くお子さんや親御さんも多いことでしょう。2001年に日本チアダンス協会が設立されて以降、高校・大学を中心に部活動やクラブが増加し、近年はジュニア世代の競技人口も増えていると言います。
今回は、子ども向けチアダンススクールを運営する株式会社Gravisの山田 康介代表取締役社長に、チアダンスの魅力や、幼少期にチアダンスを習うことで育める力などについて伺いました。

山田 康介氏 プロフィール

1986年生まれ。大学卒業後、日系コンサルティング会社に入社し、約40社20業種のプロジェクトに関わる。父の死をきっかけに独立を決意し、2017年3月にコンサルティング会社を退職。何をやるかは一切決めていない状態で、たまたま妻が出演するチアダンスの発表会を見に行く。そこでチアダンスの可能性を感じ、2017年4月にGravisの代表となって子ども向けチアダンススクール事業を開始。Gravisは現在神奈川・東京・埼玉・千葉で80教室を展開し、会員数は約2000人に上る(2023年12月時点)。

最大の魅力は「チームで一つのものを作り上げると」

石井氏
―まずは初歩的なことから教えてください。
「チアダンス」と「チアリーディング」はどう違うのですか?

山田氏:一番の違いは、「アクロバティックな演技を行うかどうか」です。チアリーディングは、ダンスの中に「スタンツ」と呼ばれる組体操のような技を取り入れ、その正確さや完成度で高得点を狙います。一方のチアダンスは、チアリーディングの中のダンス部分を独立させた競技で、スタンツなどは行わず、チームとしての一体感や表現力などを競います。私たちのスクールでは、全国約2000名の子ども達にチアダンスのレッスンを行っています。

石井氏
―ダンスと言えばヒップホップやジャズなどさまざまなジャンルがありますが、
チアダンスならではの魅力とは何でしょうか?

山田氏:ダンスはもともと「自分を表現する」という「個」の要素が強いものですが、チアダンスは、みんなで協調することで点数が上がっていく競技です。「チームとして一つのものを作り上げる」というのが、チアダンスならではの魅力の一つだと思います。今でこそ、ダンスのプロリーグである「D.LEAGUE(Dリーグ)」のように、ダンスを採点するということが一般的になってきましたが、私たちがスクールを始めた当時は、そういった大会がほとんどなくて。そんな中、他のジャンルに先駆けて、競技として争うということをやり始めたのがチアダンスでした。みんなで試行錯誤しながらチーム作りをしていく。自分だけではなくチームのために頑張る。そういった部分に、私自身も強く惹かれました。

石井氏
―子どものころからチアダンスを習うことによって、どんな力が育めますか?

山田氏:まず一つは、人のことを応援できるような精神、いわゆる「チア精神」を育むことができると思います。もともと「チア(cheer)」という言葉には、応援する、元気づけるといった意味があります。私たちの生徒さんにも、チアダンスを通して、自分だけでなく人のこともちゃんと応援できる人になってほしいと思っています。特に日本だと、「出る杭は打たれる」などと言われますよね。でも、出る杭を打つのではなく、周りが応援してあげれば、みんなが活躍できる世の中になると思うんです。そして、身体的なところでいうと、全身を使った表現力を身に付けることができます。また、先生の動きを見て自分の体で真似するという全身運動は、脳を活性化させるとも言われています。このようにチアダンスを通してさまざまな力を育むことができるので、子ども達には、楽しく踊りながら一つずつ身に付けていってもらいたいですね。

子ども達の輝きを見てチアダンスの可能性を直感

石井氏
―山田さんご自身が初めてチアダンスを見たとき、どんな印象を受けましたか?

山田氏:私が最初にチアダンスと出会ったのは、当社の取締役でもある妻が、他のダンス教室の発表会に出演するのを見に行ったときです。その発表会では、4歳ぐらいの小さなお子さんから中高生、さらには30~40代ぐらいの男の人まで、さまざまな年代・性別の人がチアダンスを踊っていました。もともと私の中には、「チアダンスは女の人が踊るもの」というイメージがあったので、子どもも男の人も心から楽しんで踊っている姿がとても新鮮に映ったんです。特に、子ども達の表情が印象的で。きらきらと目を輝かせながら踊っているのを見て、「これはいいものだな」と直感しました。当時はまだチアダンスが今ほど知られていませんでしたが、これはもしかしたら大きな可能性があるんじゃないかと思ったのです。幼少期のうちは、体を使って複雑な表現をしようとすると難しいですよね。でも、チアダンスは動きもわかりやすいし、小さい子どもでもコミュニケーションが取りやすいジャンルだなと感じました。

石井氏
―年に2回、1000人規模の大ホールで発表会を開催されているそうですね。
小さなお子さんでもそんなに多くの観客がいる舞台で発表できるようになるものですか?

山田氏:3、4歳の子どもが大勢の観客の前で、きちんと振り付けを覚えて笑顔で踊るのですから、本当にすごいですよね。私も毎回驚かされます。子どもたち自身は、難しいことをしている感覚はなく、とにかく「楽しい!」「踊りたい!」という気持ちが全面に出ているだけなのだと思いますが。もちろん、初めての発表会では緊張して泣いてしまう子もいます。でも、いざステージに立って戻ってくると、ほとんどの子が「今すぐあの場でもう一度踊りたい!」と(笑)。自分が頑張ってきたことを大舞台で発表するという体験が、自信にもつながっていくのだと思います。観客である親御さんや関係者の方々も、みんな温かい目で見守ってくれているんですよね。見ている側も一体となってステージの人たちを応援しようという雰囲気があるので、子ども達も楽しく踊ることができるのだと思います。

    年に2回開催される発表会の様子

石井氏
―お子さんにチアダンスを教えるうえで、どんなことを大切にしていますか?

山田氏:小さい子ども達に対しては、テクニックを教えるということはまだできないので、基礎の基礎を教えていくことになります。ですから、一足飛びにぱっとうまくさせるというよりは、地道に子ども達に向き合いながら、まずは楽しんでもらうこと、好きになってもらうことが大事だと思っています。ダンスの前にやるレクリエーションやインストラクターとの会話などを通じて、レッスンに来ることが楽しくなるような雰囲気作りを大切にしています。

性別や年齢に関係なくチアダンスに触れてほしい

石井氏
―グラヴィスに通っている子ども達のうち、競技として本格的にチアダンスに取り組んでいるのは何人ぐらいですか?

山田氏:競技として全国大会に出たり、全国で上位を目指したりしていくのは全体の5%ぐらいですね。それ以外のほとんどの子どもたちは、競技としてトップを目指すというより、ダンスがうまくなりたいとか、楽しいからやりたいとか、そういう目的で通ってくれています。私たちのスクールのインストラクターは、基本的に皆、もともと全国でトップレベルの選手だった人たちばかりです。なので、競技として取り組んでいるチームも教えることができます。一方、楽しむためにダンスを習いたいという子たちに対しても、同じインストラクターたちが教えています。ダンスの楽しさを伝えるためのクラスと、競技でトップレベルを目指すためのクラスとで、ギアを変えながら指導するような形になっています。

石井氏
―あえて伺いたいのですが、ご自身がトップレベルで全国大会に出ていたような方たちが、小さな子ども達を相手に教える場合、難しさを感じることはないのでしょうか?

山田氏:私たちのインストラクターには、最初に必ず研修を受けてもらいます。そのときに、「習いに来る子どもたちは、必ずしも競技でトップレベルを目指したい子ばかりではないよ」ということをしっかり伝えるようにしています。教える側はどうしても主観が入りやすくなるので、自分が競技として真剣にやってきたからこそ、「子ども達にもうまくなってもらいたい」と考えるのが自然です。でも実は、お子さん自身も保護者の方も、うまく踊れるようになることより、「楽しく踊れればそれでいい」「体を動かすようなことを習い事として習わせたい」と思っている人も多い。そこはニーズをきちんと理解して、それぞれのクラスに合わせたレッスンを実践するようにしています。

石井氏
―最後に、チアダンスに興味をお持ちの方へのメッセージや今後の展望などをお聞かせください。

山田氏:チアダンスに対して、人によってさまざまなイメージがあると思います。特に多くの方にとっては、「女性のダンス」というイメージがまだまだ強いかもしれません。そこはこれから変えていきたいと思っている部分です。現在グラヴィスに通っている約2000人のうち、男の子はわずか5、6名。でも、アメリカでは最近、男性のチアリーダーが誕生したりもしているんですよ。まさに皆さんが「チアダンス」と聞いてイメージするような、NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)やNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のチアリーダーに、男性の人がなり始めています。これからは、日本も徐々に変わってくるでしょう。私たちも今後は、男の子でも参加しやすいような、多様性を意識したクラスなども増やしていきたいと思っています。チアダンスは、ダンスのテクニックだけではなく、その根幹にある「チア精神」を学ぶことができる競技です。「チア精神」は、将来的にもいろいろなところで生きてくるものだと思います。ぜひ性別や年齢に関係なく、いろいろな人にチアダンスというものに触れてほしいですね。

    年齢や性別を超えて楽しまれているチアダンス

(聞き手/株式会社LOCOK代表取締役、金沢工業大学虎ノ門大学院准教授 石井大貴)