会報誌

幼少期の出来事。かけがえのない時間【つくし会コラム】

今号から不定期ですが、偉人の幼少期に受けた教育や親子のエピソードから学べることをご紹介したいと思います。

初回は、日本を代表する思想家・教育者の福沢諭吉を取り上げます。諭吉は、父・百助と母・順の間に、5人兄妹の末っ子として1835年1月10日に生まれました。父・百助は早くに亡くなっており、子ども達は、母・順の手で育てられました。諭吉は順について、「さっぱり、大らかで、とても慈悲深く、かつ極めて几帳面な性格だった」と書き残しています。順は、近所の家なき子がたまに家に来ると髪を整えてやり、頭のシラミを取ってあげたそうです。幼い諭吉は、そのような行為をよく理解できなかったといいます。諭吉が「なぜシラミをとってやるのか?」と順にたずねると、順は「自分でシラミを取ろうと思っても取れない。ならば、できる人がそれをしてあげればいい。それが当たり前のことでしょう?」と答えました。諭吉はその言葉を聞いてハッとし、考え方を改めたといいます。

余談ですが、順は神仏を信じなかったようで、幼い諭吉も神様からの罰にも懐疑的でした。神様の名前が書いてあるお札を踏んで、神罰に当たらないことを確かめたりしたことなどは、母から受け継がれた性格だったと言えそうです。

いずれにせよ、福澤諭吉の先鋭的かつ慈悲深い性格というのは、シングルマザーだった母・順による愛情のある子育ての賜物だったのではないでしょうか。

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