「うちの子、言葉がゆっくりかも」「気持ちをうまく伝えられていないようで心配」――0〜6歳の幼児期は、言葉の発達に個人差が大きく、不安を感じる保護者も少なくありません。まだ文章を書く前のこの時期こそ、「ことばの土台」を育む大切な時期です。
実は、文章を書く力は突然身につくものではなく、日々の生活や周囲との関わりの中で育っていきます。特に大切なのは、「自分の気持ちや経験を言葉にする体験」を積み重ねることです。たとえば、絵を描いたときに「これはなあに?」「どんな音がしたの?」と問いかけると、子どもは自然と言葉を探し始めます。これは“書く”ことの前段階、つまり「話すことで言葉を整理する」練習になります。
また、まだ言葉が少ない子には、親が「今日のおさんぽの時に見た犬がかわいかったね」「お花、きれいだったね」と語りかけることも効果的です。親のことばが耳に入り、徐々に子どもの語彙として蓄積されていきます。
この時期は、「正しく話す・書く」よりも「伝えたい気持ちを育む」ことが何より重要です。子どもの発した言葉にしっかり耳を傾け、「そう思ったんだね」と受け止めることが、言葉を育てる一番の力になります。
書くことより、「ことばにしたくなる体験」を日々の中に増やしていくこと。それが、やがて豊かな表現力へとつながっていくのです。