会報誌

“手”が育む、子どもの未来──便利な時代にこそ見直したい、感じて学ぶ力【つくし会コラム】

人間が二足歩行を始めた理由には諸説ありますが、最も重要な変化は「手が自由になったこと」です。道具を持ち、火を扱い、食物を運び、子どもを抱き、仲間と関わる。この「手の自由」が人間の進化と文化の出発点となったと言っても過言ではありません。

現代社会では、手を使う機会が減っています。スマートフォンやAI、自動化された暮らしの中で、手は「最低限の操作」に使われることが増えました。しかし、手を使うことは単なる動作以上の意味を持ちます。細かな手の動きは脳の発達と密接に関係し、子どもの空間認知力や集中力、創造力、自己表現力を育む土台になります。

今だからこそ、意識的に「手を使う教育」が必要なのではないでしょうか。絵を描く、折る、ちぎる、粘土をこねる、野菜を洗う、土をさわる。このような体験が、子ども達の人間らしい知性を育むことになります。

便利な時代だからこそ、私たち大人が子どもたちに、手を使う楽しさや喜びを知る機会を提供することが求められているのではないでしょうか。